成長変化する病院-3
現在のところ、貴島病院は、2階3階が一般病棟で93ベッド、4,5,6階が療養病棟で120ベッドの構成です。
療養病棟では5階に特別浴室があり、2台の入浴装置を設置して、3つの看護単位の入浴介護を行ってきました。
この特別浴室をさらに整備するにあたって、5階の浴室を拡げ、入浴装置も3台ないし4台に増やして充実したものにする案と、4,5,6各階に1ヶ所ずつ浴室を設け1台ないし2台ずつ入浴装置を設置する案の二つのやり方が考えられました。
初めは1ヶ所に広い浴室を確保して、集中的に入浴サービスを行うことが、効率的と思われたのですが、分析してみると分散配置がサービスの向上に大きく寄与することがわかりました。入浴サービスにおいては、大規模に設備やスペースを集約してもサービスの室は上がらず効率的ではないようです。
そのこと(分散配置による看護効率の劇的な改善)はリネンサービスや薬品等の物品サービスで実証され(「建築が病院を健院に変える」彰国社、健康デザイン研究会編P.108)、そもそも貴島病院で既にリネンは前回の増築を経て分散収納されていたのでした。
入浴サービス見学記
成長変化する病院-4
N 様、
先日はメールありがとうございました。
ところで今例の貴島病院の特別浴室の改修をやっているのですが(このところいつもKさんに手伝ってもらっています)、そこで一つ疑問があるのでメールしました。
寝たきりの患者を入浴させるのにストレッチャーのまま入れる浴槽があり(これが特別浴槽で各メーカーが競っている設備です)、もちろん専用のストレッチャーなので、浴室でそれに乗り換えなければいけないのですが、一応そのまま浴槽の上に置くとストレッチャーが下がるか、浴槽が上がって来るかして、お風呂に入れるわけです。また浴槽の上側にもカバーがあるタイプがあってそこに手を入れる穴があり、両側から手を差し込んで中の人をシャワーで洗ってあげられるシャワー浴槽みたいなのもあります。でも結局は最後にストレッチャーを部屋の中に引き出して、上からシャワーをぶっかけて魚を洗うみたいに洗うんですね。それで部屋中びしょびしょになるわけです。
浴槽の中に寝て洗ってあげられるような感じのものもあるのですが、メーカーに聞くとやはり最後はストレッチャーを手前に引き出してシャワーをかけて洗うようになるんだそうです。
人間の身体はお湯に半分浮いている方が重さがなくて扱いやすいと思うのですが、何故ストレッチャーの上で重力がかかった状態で洗うことになるのでしょうか。介護の専門家に聞いてみていただけないでしょうか?お忙しいと思いますがよろしく。
nolift policyということを一生懸命説いている人がいて(http://www.nolift.com/、http://www.noliftjapan.com/)、その人にも聞いてみようかと思っているのですがまだです。まぁちょっとそのsafe patient handlingの問題とは別かも知れませんが。
(Nさんから)
まずは、浴槽の外で体を洗う理由ですが、日本では普通洗い場で体を洗ってから浴槽につかりますよね。寝たきりの状況でもあくまで出来るだけ普通の生活に近づけるという考え方から浴槽の中では洗わないのだと思います。こういった施設でも洗体してから湯につかるという順番で行っているは ずです。浴槽内で体を洗うと本人も不安定ですし、汚れたお湯につかることになってしまいます。
機械を使用しての入浴ですと、どうしても人間らしい扱いをしていないように感じてしまう部分はあるかと思います。施設の中には機械的に行っているところもあるでしょうし。しかし基本的に介助される側の尊厳を大切にして(声のかけ方を工夫したり、タオルをかける等で、羞恥心をできるだけ 緩和したりして)行うのが介助する側のあるべき姿だと思います。 S(N)
N 様、
先日はお忙しいところをご意見をいただいてありがとうございました。ご報告が遅くなりましたが、あの後、Kさんとふたりで貴島病院の入浴作業を見学してきました。
特別浴室は現在5階にしかない(3階は一般病棟で使っているので)のですが、4階の患者が入る日で、約40人近くを午前中に入浴させる日でした。特別浴室に3人と病室に2人が配置されていて、患者側から見ると、脱衣は最初に病室で行われ裸の状態でストレッチャーに移乗して(二人掛かり)タオルをかけて浴室まで運ばれてくるのでした。全部寝たきりの人ですから入浴用のストレッチャーにここでもう一度移乗するのは(足元がすべりやすいし)もちろん二人掛かりです。
看護婦さんは患者一人一人の名前を呼び世間話やらいろいろ話しかけると同時に全身をひっくり返して細かくチェックして、必要な手当もしていました、褥瘡、湿疹、かき傷等がないかですが、引っ掻く人にも細かく注意していましたがそれでも傷にしてしまうんですね、なにしろぼけてる人が多いわけですから。
その後タオルをかけて病室にもどって行くわけですが、その間に病室側では何をしているかと言うと、もちろん次の人を脱衣、移乗して、用意し搬送しているわけですが、主要な仕事は患者がいない間にベッド上のシーツ、枕他リネンをすべて交換し、帰ってきた患者にも新しい病衣に着替えさせているわけです。一連の作業が続く間、5人のうち3人目の人は、適宜入浴を手伝ったり、搬送にかかったり、時に応じて対処しています。
全患者を週2回入浴させるので、4,5,6階を3日に割り付けると一週間が一杯になり、浴室はフル回転しているわけです。今度4,5,6階と各階に特別浴室を設けると、この作業は大部余裕ができると思いますが、そんなわけで、私たちの予想を越えたたいへんな、看護単位全体の一大作業でした。
患者にとっても、この週2回の入浴は話しかけてもらうことも含めて大事な行事で、細かく観察しているのが看護婦さんですから、それを見ていると、これはやはり私たちが簡単に考えていた介護入浴ではなく、非常に重要な医療行為であると思いました。
自分の父親の場合を考えると老人保健施設やグループホームではここまではやってくれていないし、病院でないとやれるものではないという感じでしたが、どうなんでしょうか。厚生省の役人は見学したことなんかないんでしょうね。
最後に猛烈に働いていた看護婦さんに、入浴ロボットってのはないのかねぇ、なんで私らがこんなしんどい目をせにゃならんの、と言われてしまいました。
1人について4回移乗するというのは、やはりたいへんです。しかし人力でなく機械でとなるとこんなすばやい気の利いた動きはできないし、HONDAのお茶を運ぶロボットとか村田製作所の自転車に乗るロボットなんかで遊んでないで、入浴ロボットを早く開発してくれないと困りますね。以上ご報告まで。